かくやのおこうこ

 12月17日放送の「相葉マナブ」は「なるほどレシピ~冷蔵庫の余り物~有名人&有名人スペシャル!」。
 その中で落語家・林家三平さんと結婚した女優・国分佐智子さんが、お姑さんから引き継いだというぬか床で作った「古漬け」を使ったアレンジレシピで「ピザトースト」を作りました。とても美味しそうで「かくやのおこうこ」について調べてみました。

「かくやのこうこ」
 古漬(古い漬け物)を水で洗い、生姜と共にこまかく刻んで醤油などをかけたものです。
 この言葉は、徳川家康の料理人、岩下覚弥が考案したという説と、高野山で隔夜堂(一定期間神仏へ一晩ずつ参詣する修行のためのお堂)を守る僧侶が作り始めたという説の2つが語源として挙げられています。

古典落語 酢豆腐
 夏の盛りに、町内の若い衆があつまって一杯やる相談をしていた。酒はあるのだが、銭がないので肴がない。糠味噌の古漬けはあるのだが、臭いので誰も糠味噌樽に手を突っこもうとしない。昨夜買った豆腐があったが、与太郎が鼠がかじるといけないと釜のなかにしまったので、暑気にやられて腐ってカビが生えていた。そこへやってきたのが、気取っておつにすました若旦那。若い連中は、若旦那を食通だのなんだのとおだてあげ、この腐った豆腐を食べさせてしまう。『若旦那、これはなんてぇ食べものでございます?』『私が思うに、これは酢豆腐だな』『酢豆腐ですか。さすが若旦那よく知っていますね。沢山食べてくださいよ。』『いや、酢豆腐はひと口に限ります。』
  ※参考文献:『落語手帖』矢野誠一著 講談社+α文庫


 知ったかぶりの若旦那は、豆腐が腐っていると解ってはいるが、おだてられて食べてしまう。最後に「いやあ、酢豆腐は一口にかぎる」と逃げたのは、たいしたものだ。若旦那あっぱれである。

 上方落語『ちりとてちん』は、腐った豆腐に白砂糖と唐芥子の粉をまぜたものを長崎名物『ちりとてちん』だとして、気取り屋の男に食わせる話になっている。
(『江戸の食文化』山本志乃著 河出書房新社)

 亡くなった古今亭志ん朝師の得意ネタでした。ちっともリッチでないのに、とてつもなく粋なのです。艶っぽい江戸の情緒が伝わってくるのに、この「かくやのこうこ」という言葉の響きも一役買っていたと思います。

 

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