第9回ヒロシマ賞

 昨日(7月18日)第9回ヒロシマ賞の授賞式が6時PMより比治山の現代美術館で行われました。第9回の受賞者はドリス・サルセド氏でした。

 

ヒロシマ賞
 現代美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、世界の恒久平和を希求する「ヒロシマの心」を現代美術を通して広く世界へとアピールすることを目的として、広島市が1989年に創設したものです。3 年に1回授与されるこの賞は過去8組のアーティストが受賞しています。副賞は500万円でした。

 

ドリス・サルセド、
 自国コロンビアをはじめ、世界で横行する暴力や差別などに対して、芸術が強い抵抗の力を持ち得ることを一貫して示してきた作家です。1958年にコロンビアの首都ボゴタに生まれたサルセド氏は、ボゴタのホルヘ・タデオ・ロサノ大学で美術の教育を受けたのち、1980年代の初めに渡米し、ニューヨーク大学の大学院で彫刻を学びます。その後、80年代半ばにボゴタへ戻り、90年代の初めまでコロンビア国立大学で後進の指導に当たりながら、制作活動を続けます。

 1990年代前半からヴェネチア・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレなどの国際美術展に参加し、日常の家具や衣服などを彫刻として再生させながら、暴力による犠牲者の記憶を静かに訴える作品や、空間全体を死者を悼むための場に変容させるような大規模なインスタレーションによって、国際的な評価を確立してきました。寡黙でありながら、人を引きつけるその作品は、扱われるテーマを観る者の心に強く訴えかけます。

 2007年には、ロンドンのテート・モダンの床に167メートルにわたる亀裂をつくり出したインスタレーションで、さらにその名を世界に知らしめました。2010年にはスペイン文化省主催のヴェラスケス造形芸術賞を受賞しています。また2015年の2月からは、シカゴ現代美術館を皮切りにニューヨーク、ロサンジェルスを巡回する大規模な回顧展が開催される予定であり、サルセド氏の芸術に対する評価は決定的なものとなるでしょう。

 

第9回ヒロシマ賞授賞決定理由について
 サルセド氏の第9回ヒロシマ賞受賞の理由としては、暴力や差別などの社会的、政治的な問題に一貫して関わってきた作家であり、人類史上類を見ない暴力がもたらしたヒロシマの悲劇を、独自の方法で現代と結び付け、観る者に訴えかける展示が期待されること。そして、暴力の犠牲となった人々に寄り添いながら、死の悼みを超え、再生への願いを込めた作品を制作するなど、その創作活動は、ヒロシマ賞の趣旨に相当すると高く評価されました。また、南米の作家として初めてのヒロシマ賞受賞者であり、被爆70周年をまもなく迎えようとするなか、これまで広島の地を訪れたことのない作家がヒロシマに改めて向き合うことは、今後ヒロシマをどのように世界に伝えていくかを考える上で貴重な機会となると考えられます。


過去の受賞者

 第1回(1989年決定) 三宅一生/デザイン
 第2回(1992年決定) ロバート・ラウシェンバーグ/美術
 第3回(1995年決定) レオン・ゴラブ&ナンシー・スペロ/美術
 第4回(1998年決定) クシュシトフ・ウディチコ/美術
 第5回(2001年決定) ダニエル・リベスキンド/建築
 第6回(2004年決定) シリン・ネシャット/美術
 第7回(2007年決定) 蔡國強/美術
 第8回(2010年決定) オノ・ヨーコ/美術
  (広島市現代美術館HP引用)

市長よりドリル・サルセド氏に第9回ヒロシマ賞が手渡されました。

 

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