陰の人

 神戸新聞に吉川英治は「菊作り咲きそろう日は蔭(かげ)の人」と詠んだ。丹精込めた職人も晴れの日は脇役、という意味だと載っていました。

 

 昨日書きました、男子テニス世界ランキングで、錦織圭選手が日本男子で初のトップ10入りを果たしました。「次はトップ5」と語っています。その錦織圭選手のコーチがマイケル・チャンさんです。小柄なチャンさんのプレーを思い出します。体力と粘り、闘争心で全仏を制し、以後も長く活躍した。アジア系という親しみもあり、私も若い頃、テレビ中継についつい見入りました。その経験が菊作りの肥やしのようになり、似た体格とプレースタイルの若者をたくましく育てました。この往年の名選手が今季から、「蔭の人」となって彼の躍進を支えています。

 

 どの世界にもそんな脇役がいます。プロ球界の王選手の荒川コーチ、イチローと河村健一郎コーチ、松井秀喜選手と長嶋監督、若松勉、真弓明信さん、昨年引退した宮本慎也さんの共通点は、中西太さんの教えを受けたことです。どの方も長所を見つけ、労を惜しまず教える伝説の強打者が、名選手を生んみました。

 

 ボクシングの「蔭の人」といえば、この人を外せません。井岡弘樹さんら世界王者となった何人もの日本人選手に寄り添ったトレーナー、エディ・タウンゼントさんです。ボクシングを愛し、プロ意識をたたき込む厳しさが、リングに花を咲かせました。いわば水やりの人です。華やかさの傍らで静かにほほえみます。

 花咲く時は水やりの人のことを思います。
                       (神戸新聞 正平調)引用

 

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